前回同様,法律制度に対する誤解について今回も説明しようと思います。
問 遺言を残すとかえってトラブルになると聞きました。それであれば,残さない方がいいのでしょうか。
答 私見ですが,遺産の分け方や相続割合について希望がある場合には残した方が良いでしょう。実際に業務でも遺言が無いがために事案として適切な解決が難しかったと思う事例も経験しています。
 但し,留意点の中で特に大きなものが二点あります。
1 遺留分に配慮すること
 遺言を残しているにもかかわらず,トラブルになるケースで多いのは遺留分侵害が生じているケースが一つの例です。このような遺留分侵害が生じないよう配慮する遺言を作成する事は重要です。但し,類型的に遺留分侵害があってもあまり問題とならないようなケースも存在しないわけではありません。遺留分を意識しつつも,具体的な状況に応じて遺留分にとらわれない遺言を作成する事も有ります。
2 遺言者の遺言能力に配慮すること
 遺言を残すためには遺言の内容を理解し,それを残す事が出来る程度の能力が必要です。この能力を遺言能力といいます。相続トラブルでよくある話しとしては特定の相続人(「A」といいます。)が,遺言能力が無い遺言者(「B」といいます。)に無理に遺言をさせ,それも、Aにとって非常に有利な内容の遺言をさせるような場合に問題になる事があります。
 お年寄りの方については高齢になればなるほど複雑な内容が理解しづらくなってきます。このようなケースでは遺言を残すにあたって後ほど遺言能力が争われないように遺言を残す事が本人意思に基づくものである資料を残すなど一定の対応が必要です。
 適切な遺言を残すためには、どのような遺言であれば相続トラブルにならないかという予防法務の知識が必要なため、弁護士が遺言作成に関わる事が多いというかと思います。